ことのはスケッチ(407) 2012年(平成24年)11月

『羽毛恐竜』

 世界最大という。幕張メッセをめがけ、地球上の広い範囲から化石達がやってきた。放ってはおけない。夏休みが終り静かになるだろう時期をひたすら待った。

 恐竜達は、地球の隅々にまで、生息、適応、進化、繁栄をしていた様子は、化石の発掘により確かめられている。
 長い間、「爬虫類の祖」と考えられてきた恐竜達が、「羽毛に覆われていたにちがいない」、との発見に、「鳥類の祖」ということになった。部分的には鱗状の皮層もあっただろうが、羽毛をもつことにより体温調節をする「内温動物」であること。ジュラ紀中期の巨きなノミの化石が発見され、恐竜の羽毛などに入り込み、血を吸っていただろうこと。
 羽毛を電子顕微鏡検査すると、褐色や黒色の色素しかもっていなかったようだ。現生鳥類に照らし体表や内部の細かな毛の造りにより、光りの屈折、反射…多様な色に見える「構造色」ということではないだろうか。
 夏毛、冬毛、毛替わり、色や模様、カムフラージュ、羽毛の形態、種類…現生鳥類から今までの恐竜へのイメージは、どんどんくつがえされ、熱帯魚のような色彩の恐竜が出来上る。

 恐竜史上もっとも大きな、100屯もあるアルゼンチノサウルスが闊歩していたアルゼンチンに住んでいたから。あんなに巨きくなってしまうことが頷ける。太古の時と今とでは全く異なるだろうことは承知のうえで、巨大化を促す豊鐃な大地であること、酸素濃度や二酸化炭素の濃度の都合が良かっただろうこと。
 ブェノスアイレスとは「良い空気」という意味があり、他国からアルゼンチンの空港に帰り着くと「空気がおいしい」とまず思う。髪がサラサラになって、とても気持が良い。
 今の人間の前、アルゼンチンの大地パタゴニア(大きな足の意味)には、パタゴン族という二メートルを越す人種がいたこと、オウナという裸で暮らす人種がいたということ、セリーナさんから教わった。
 大きな油田もあり、大きくなる素質のパタコニアの大地を歩くアルゼンチノサウルスの姿を思う。

 中国の後期白亜紀の地層で、諸域で二万点をこえる恐竜化石が「化石壁」と発見された。
 羽毛恐竜、動植物の化石、魚類の化石、昆虫類、カメ類、カニ類、巻貝、二枚貝、水生、半水生植物…なぜ、化石になってしまったのか。
 今と同じような形の虫達が、「母岩」にペチャンコになっている。
 アルゼンチンやブラジルから連れてきた、私の化石達と同じような形をしている。
 地球の上に「本当にあったこと」を教えてくれている。
 これからは加速度的に太古のことを知ってゆくのだろう。遠い過去の、正確なことを自分に教えてあげつつ生きてゆこう。

 
 

 


Copyright (C)2002 Yuri Imaizumi All Rights Reserved. このページに掲載されている短歌・絵画の無断掲載を禁じます。