ことのはスケッチ(421) 2014年(平成26年)新年

 縁、貫名海屋に繋ぐ玉由と由野。外国で生れ育ち、暮すゆえ、知らないまま…うろ覚えのまま…時が過ぎる。彼女達と私と、共に日本を祖先を知ってゆこうと思いは至った。
 「貫名海屋。菘翁。号多数。安永7年3月生(1778年)−文久3年没(1863年)。江戸時代後期、儒学者。空海の書を学び、王義之、王献えの把握に努めた書家。幕末の三筆と称され。文人画家。詩人。唐詩、頼山陽と論じ…。

貫名海屋の詩
 文政十七家絶句
 春夜
光風綺月度二林頭一。花影溶レ庭踏欲レ流。半夜玉人猶未レ寝。 笛声遥在二水晶楼一。

春風 綺月(きげつ) 林頭を 度(わた)り、花影 溶溶として 踏まば 流れんと欲す。
半夜 玉人 猶(な)ほ未(いま)だ寝(い)ねず、笛聲 遥か水精樓に在り。

心地良く風がゆく美しい月は 林の上にあり ゆったりと月の光りの花影を 踏んでゆきゆくことにしょう。
夜ふけてあの美しい人は いまだ寝られずにいるだろうかはるか彼方から もうろうとして笛の音が                          (私注)
    
 飛騨高山游中(六十歳代に川上淇堂を高山に訪ねた時)
水田渺渺稲花香、匝濃嵐接莽蒼。

蓑袂笠檐時出没、一欄煙雨似瀟湘

水田渺渺(べうべう)として 稲花(たうくわ) 香(かんば)し 匝(さふあん)たる 農嵐は 莽蒼に接す。

蓑袂(さべい) 笠檐(りふえん) 時に出没すれば、一欄の煙雨 瀟湘(しょうしょう) に似たり。

水田は広々として稲の花が香る。たちこめた霧は、はるか彼方まで青い草木をかすませて蓑笠の人をときおりみかけると、窓の外の霧雨は、瀟相(中国の大河)に似ているなあ。                            (私注)

 錦織里新居 (錦織里新居詠草 歌巻)
朝な朝なおひそふ野面のわか草を
まがきのまゝに見るぞうれしき

梅柳くれなひのはなこきまぜて
名におふ村のにしきおるめる

わがうゑしくれ竹いまだのびざれば
待わぶるなりうぐひすのこゑ


 富子の歌贈らるゝに答
里人となるたのしさはわかなつみ
あやめ引つゝ問ふ伴もあり

 
 

 


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