ことのはスケッチ(430) 2014年(平成26年)10月

『天照大神』

 天照大神は、機織り小屋に神衣を織られ、神田の稲を育まれ……新嘗祭をとり行なう日本最初の太陽神であること。祖父が語り教えて下さった昔。
 それ故、私自身の人生を始めるにあたり、織物、染物、糸造り、図案…テキスタイルの辺りを選択したのだった。
 「天照大神」を知りたい!とこのごろ思い始め、「古事記」を読み、私の頭ではついてゆかれない神々の様子に挫折。
 ドナルド・キーン著「日本文学の歴史@古代、中世篇、日本の創造(紀元前六六○年)よりお教えいただく。
 三人の神が、高天原に出現するところから始まり、様々な神が、誕生し、島々が生まれ、最初の英雄、イザナギとスサノオノミコト、スサノオの姉アマテラス。
 アマテラスは、水田で稲を育て、織を織り。残酷で怒りっぽいスサノオの仕業に怒るアマテラスは岩屋に身を隠す。世界は暗となり「天岩戸隠れ」には、太陽の必然性の意味を知り、農耕、豊穣への母なる女神、天照大神の記録された日本のはじまり。
 神が人間のように表現され、現在に続いている様を知る。皇統譜には、天皇家の始祖として「天照大神」の記載があるという。
 ようやく岩屋から誘いだし、スサノオは大蛇を退治するなど英雄になってゆき、スサノオが花嫁に宮殿を建てるとき詠んだ和歌。

 八雲(やぐも)立つ出雲八重垣妻籠(やえがきつまご)みに八重垣作るその八重垣を

 太陽の女神、大地母神、そのうえ武力、軍事力へのパワーも備え、日本の最高神として君臨された天照大神、霊石山へ行宮されたときの、朝日に輝やく樹氷を詠まれた、二千年以上の時を経た和歌。

  天照大神御製

  あしひきのやまへはゆかじ しらかしの すえもたははに ゆきのふれしば

 紀元九○五年に編まれた「古今和歌集」は、日本詩歌の理想を述べ。紀貫之の仮名序「やまとうたは、ひとのこころをたねとして」とある。
 歌とは、歌人の心の内を表現することであり、妙技をひけらかすことではない。「体験への忠実さ」が初期の歌から重視されている。
 五七五七七で詠うものは、直感でとらえたものであり、短い詩の中に凝縮され余韻をともなう。
 日本の国のはじまりから、和歌の存在したことを知り、和歌のリズム五七五七七に携わり生きてこられたことを心の底からうれしく思う。

 
 

 


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