ことのはスケッチ(445) 2016年(平成28年)新年

『天田愚庵』つづきA

 明治三十六年。東京大相撲の黄金時代。愚庵は、京都から上京し、陸羯南に泊り、陸羯南手配の桟敷席より相撲を観戦した。
 回向院は、明暦三年の大火事で亡くなった人々を供養するために建てられた寺院、多くの人々の、相撲を観戦する所となっていた。
 境内、本堂の右側に設けられた、よしず張りの巨大な仮設相撲小屋で、春と秋は江戸、夏は京都、秋は大阪と、開催された。
 梅が谷関と常陸山山関と…愚庵は、ほとばしる歌を詠んだ。

  • 梅とよび常陸とさけび百千人声をかぎりにきほひとよもす
  • 天地も今砕けむ増荒雄がいかづちのこときほひすまへば
  •  両国回向院境内全図の錦絵をみつけた。櫓から櫓太鼓が聞こえてくるようだ。
     “梅” “常陸”と叫ぶ愚庵の声が聞こえてくるようだ。

     
     

     


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