ことのはスケッチ(382) 2010年(平成22年)10月

『コラーゲン』

宇宙始まって以来、進化の末。うれしかったり、悲しんだりしている生物として私自身も存在しているのに「生物の始まり」へ、まだゆきつけない不思議。
水の性質を知り、少し生命のはじめに近づけた気持になったから、いま謂われている生物のはじめを調べることにした。
地球がはじまって約四十六億年。西オーストラリアの三十五億年前の、隆起した地層に、かって深海の熱水噴出口付近の環境にいて、細胞分裂をした生物の化石が発見された。
現在、最古の生命の化石とされている。
この化石のシアノバクテリアは、光合成をしていた。光合成は、複雑な営みが必要であり、最初の生物がその機能をもっていたとは考えられない。もっと単純であっただろう。生命の始まりは、この化石より溯ることになる。
地球の始まりの頃は、地表は紫外線が強く、変化も激しく、安定していたのは深海だった。熱水噴出口付近は、エネルギーに満ち、栄養豊かなところで、生命の元は、ゆっくり進化したのだろう。
シアノバクテリアとは、真正細菌の一郡で、光合成により酸素を生みだすもの、単細胞で浮遊するもの、小数細胞の集団をつくるもの…いろいろな性質のものがあったと思われる。 あるシアノバクテリアは、ストロマトライト岩石をびっしり覆い、光合成をして大量の酸素をつくりだした。
光合成とは太陽の光のエネルギーで水を分解し、二酸化炭素を炭化水素などの有機物にする作用のことで、水を分解するときに廃棄物として酸素ができる。
当時の多くの生物にとって、酸素は有害だった。酸化されて生存の機能が失われたり、酸素を苦手とする嫌気性生物は、酸素を解毒できる好気性細菌を自身の身体に取り込み、共生をしただろう。
大量の酸素がつくりだされゆきわたると、酸素を大量に必要とするコラーゲンを作りだす生物があらわれ、細胞同士の接着がはじまった。単細胞生物で留っていた生物に、多細胞化が促進され…今の生物へと続く…。

コラーゲンとは、タンパク質のひとつで、多細胞動物の細胞外基質の主成分。今の人間の体内の全タンパク質の三十パーセントを占めるのだそうだ。
最も大量に存在するコラーゲン線維性は、骨に含まれ、骨に弾力性をもたせ、皮膚の真皮にも多く、皮膚の強さを生みだす。軟骨、眼球の硝子体液であったり。
細網線維コラーゲンは、網目状の構造をして、細胞などの足場を作り、傷などの治癒を進ませる。
美容、健康…の存在かと思っていたコラーゲンの根本にであえた。

人間が出来上がるだけの細胞を、コラーゲンが接着しつづけたこと、コラーゲンが地球に生れいでたことをまず思う。
細胞間接着にセルローズを利用した生物は今の植物へと続いたのだった。

 
 

 


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