ことのはスケッチ(337) 2007年1月

『メタルハウス』

マイアミの友人が、メタルを骨組みにした家を建てる仕事をしている。
日本のように地震や台風や・・・天災の多いところには、軽量、頑丈素材の家が良いのではないか・・・などと話しているうちに、「雪深い新潟に一棟たててみよう」、という話がまとまった。
この話のメタルハウスを建てるべく、資材の輸入業務をすることで、私も参加することになった。

国と国とに渡って、物が移動することは、ばかばかしい程大変なこと、数、量、質、原産地、製造元・・・すべて書類のうえに明らかになるべく、一棟分のネジの大小種類等など、事細かにFAXが送られてくる。
そして後、それらが納まったコンテナーが幾つ、どの船に乗って、いつ横浜港にやってくるか。
現実として、支度がされてゆくことに関っていることは、スリルあるゲームをしているようにワクワクする。
私自身のすることは書類のことだけ、蜂蜜を輸入した時のように、本当の重さが加わるわけではないけれど、家一棟分の書類は重く重く感じられた。
本当に、資材が日本にやって来るのだろうか、と思っているうちに、横浜港に到着の旨があり、通関の手続き開始、通関後、新潟までの陸送。
今頃どこを走っているのかな。
アメリカから、日本の大工さんと打ち合わせの技術者がやってくる。
前もって作った基礎の上に、メタルの柱がとりつけられ、FAXで入ってきたネジの本物で、しっかりと固定されているだろう・・・。

もう我慢出来なくなって、糸魚川の建設現場まで見にゆくことにする。
朝早く上越新幹線にのり、長岡までいった。長岡から信越線の特急に乗り換えると、日本海の波打寄せる近くを走る。こんな景色は見逃せない。海側ばかり見ていて、反対側の見られないことを悔やみつつ。
ここが糸魚川、しっかり思う。
駅からほんの少し歩いた所に、メタルハウスの建築途中現場があった。
常の年なら雪になるはずの雨が降っている日だった、厚く積もる雪にも耐える構造になっているという頼もしいメタルの柱が光を放って林立する。
なんと美しい。

たしか小学校の時だった。糸魚川構造線というをおそわった。それ以来ずーっと頭にあった所。そこにメタルハウスが建つことになり、私のなかでは凄い。
そしてそのまま、糸魚川静岡構造線、この辺りを見せていただいた。
日本アルプス。飛騨山脈、赤石山脈、白馬岳、乗鞍岳、上高地、身延山・・・に連なる構造線に沿って、白馬岳源流の姫川は、糸魚川で日本海になる。
姫川沿いに古道「塩の道」の踏み締められた歴史。
長野にどうして「塩」の付いた名前が多いのか謎も解けた。
塩尻の駅のホームのぶどう棚に涼を求めたことがあったなあ。
姫川の翡翠を集めた翡翠館。巨大翡翠原石を中に配した翡翠園。お米のこと。水のこと。野菜のこと。魚のこと。美術館のこと。世界中の童話集収のこと。
糸魚川が大きな現実となった

 
 

 


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