ことのはスケッチ(414) 2013年(平成25年)6月

『円空』

 子供の頃だった。「円空仏」に出会ったのは…。「同じ気持になれているような」そんな幼ない感動だったけれど。
 長かった外国住いの潜在にも、「円空仏」は私の心の中にいてくださった。
 日本に帰り、日本人として生れた締めくくりに、自分なりの仏様を造ろう…とこのごろ思う。
 仏像彫刻を勉強していた友人藤崎徹氏が、仏師としてクラスをもつほどに成長された。彼に教えていただくことにする。

 円空(一六三二年〜一六九五年)江戸時代前期、今から三百年ほど前。六十四年間の生涯に、十二万体の仏像を彫られ、千六百首の和歌を詠まれた。墨の線の大般若経の添絵も残る。
 美濃の国に生れ、早くから仏門に入られ修業と全国を行脚され、訪れた土地の山林の木を素材に、木の生命力、神仏宿る木材から鉈とのみにより仏を彫りい出す。
 簡略された造形に、木の素材の魅力が引き出さる。木が風化され…虫喰いになり…
 干ばつに苦しむ人には竜王像を。命を救うためには阿弥陀像を。災害に苦しむ人には不動明王像。病に苦しむ人には薬師像と。悩み苦しむ人には不動明王像を…。
 十二万体目の仏像「観喜天」を彫り終えられ、弥勒寺境内の長良川の畔で、即身仏となられた。
 古今和歌集、空海の漢詩を手本に詠まれた円空の和歌を抜粋。

○皆人は 仏に成を 願ひつつ まことになれる けさの杉の木
○祭るらん 産の御神も 年越へて 今日こそ笑へ 小児子(ちごのね)の春
○老ぬれは 残れる春の 花なるか 世に荘厳(けだかけ)き 遊ふ文章(たまづさ)
○伊吹山 法ノ泉の 湧出る 水汲玉ノ神 かとぞ思う
○大峯や 天川に 年をへて 又くる春に 花やみるらん
○昨日今日 小篠山に 降雪は 年の終の 神の形かも
○こけむしる 笙の窟に しきのへて 長夜のころ 法のともしひ
○作りおく 神の御形の 円まどかなる 浮世を照す かがみ成けり
○尊形(かり)うつす 花賀とそ念ふ 歓喜(よろこび)の 法の泉も 湧きて出(いづ)らん
○立ち上る 天の御空の 神なるか 高賀の山の 王かとそ念

 
 

 


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