ことのはスケッチ(416) 2013年(平成25年)8月

 『グレート・ジャーニー』A

 私には、何もなかったアルゼンチンで、それでも仕事をはじめ、アルゼンチン生れの二人の女の子を得、この子達に助けられつつ、私自身が地球の上で困ったことは、子供達からはすっかり取り除いてあげよう…私なりの全力を尽くしたつもりになっていたアルゼンチンでの生活。

○ アルゼンチンと日本との仕事をするにあたり往復すると地球を一周したことになる距離を、飛行機に乗ったこと七十回か八十回か…。せっせと地球をまわったのだった。
 その間、地上一万メートル程の位置より地球儀的に地球を見下し、宇宙的に、気象的に夜空的に宇宙を観察した。
 アルゼンチンを発つと、アンデス山脈の山々を掠めチリに着陸。離陸して魚粉の匂いのペルーへ着陸。ボリビア。コロンビア。べネズエラ。パナマ。メキシコ。マイアミ。ロスアンゼルス。ロッキー山脈を、太平洋を、やっとやっと羽田に着く。時差があり、何日かかったのか計算も出来ない。その都度のコースにもより、後に、この各駅停車みたいなのは無くなってしまったけれど。今でも、とても遠い。日本での仕事も終え、そしてまたアルゼンチンへ帰って行く繰り返し。

○ ブェノスアイレスから、「パン・アメリカン・ハィウエー」をポリビア・ラパスまで走り抜けたことがあった。
 途中、リャマが赤いリボンをつけて群ている。日干しレンガの屋根の無い家、ずっと車で走って、何にもない処を人が歩いていた。…今回「グレートジャーニー展」に展示されているような、ミイラ、手術のあとのある頭蓋骨、細工されている骨などの博物館。サボテンの木で出来た教会、織物、染物、低温で焼かれた焼物…南米文化に近付けた。

○ コルドバの一つの山の頂上に、セリーナさんの別荘があり、毎年の一ヶ月に及ぶ夏休みを過ごした。
 アルゼンチンに多い植物、見知っている植物、知るも知らぬも昆虫達、夜の空を埋め尽くす星々。一週間も続いて蝶蝶の大群が空を覆ってとんだこと。ツクツクという玉虫のような虫が、ポーと大きく光を放って飛んでいた。
 馬に乗って、馬でゆくセリーナさんのあとを追い、コルドバの山を、川を…ガウチョの生活にも分け入った。
 土で出来た丸いパン焼窯が庭先にあり、きっと柳の木が生えているガウチョウ達の庭で、牛の踝の骨を投げ上げ、土に落ちた向きで興じるバクチ?をしていて、参加させて下さった。マテ茶を飲み飲み、ギターのリズムフォルクローレの歌に、踊りに仲間入り。
                                         つづく

 
 

 


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