ことのはスケッチ(419) 2013年(平成25年)11月

『グレート・ジャーニー』D

○ 南極に近く、パタゴニア国立公園の内、太古の自然が続いているところ。一年のうち、三ヶ月間だけ、あとは雪に埋もれてしまい行くことは叶わない。
 そんなところにセリーナさんの友人の億万長者の別荘がある。「絵を描きにゆこう」、いつものようにセリーナさんは、突然誘って下さって、すぐ実行される。
 飛行機、舟、馬、車、手助けして下さる人たち、食事を整えて下さるシエフ…すべて億万長者の自家用を尽さないことには辿り着けないところへゆく。
 ブェノスアイレスからネウケンの空港までは民間の飛行機に乗った。そこに長者のプライベート・ジェットが待っていて、私達も、食料も滞在グッズも、シェフと助手も…諸々積み込み、離陸。たっぷりのレアメタル、石油…埋まっているだろうパンパスを飛んで飛んで、湖畔、白く砂つぼい所をめざし滑走路なんて無く、そこに野生の馬が三・四頭、馬達が自主的に移動するまで上空を旋回して待っていた。
 湖畔に着陸。三台の車が待っていて、人間も食料も、飛行機に積んであったものを移し、ガタガタドサンドサンの道を走ること一時間。他の湖ラプラタ湖に着くと、船が待っていた。
 この辺り、アンデスの湖は、岸からすぐ千メートルにもなる氷の水。浮力無し。湖に落ちた物は、何もかも限りなく沈んでゆくと。恐ろしさに身を硬くしつつ、また一時間ほど。別荘の船着きに止る。
 雪が屋根より積るという所なのに、巨大な一枚ガラスに四方を囲まれたリビンクルーム。それぞれ一人づつに至れり尽せりのゲストルーム。ゲストルームに籠もって良いし、リビングルームで社交をしても良いし…。植物の好きな人には植物専門家が控えていて下さる 。山に登りたければ専門家がサポートして下さる。馬に乗りたければ馬の……。
 三度三度の幾つ星?。アペリティフからナイトキャプまで、スターシェフの今を最高の至れり尽くせり。
 危なくないように、邪魔をしないように、遠くから見守られていて、南極よりの空気のもと、木々草々と遊び、描き、髪も肌もつるつるぴかぴか。

○アフリカ・タンザニア・ラエトリ遺跡の人類、最古と残されている親子の足跡のように、私と子供と一緒に地球の上を歩いた足跡。子供達は子供達自身の足跡へ。私も私の足跡を。

○日本人だから、日本へ帰り着き、一月の緋寒桜を沖縄に観て、五月の北海道の十間道路のまだ固い蕾だったこと、日本列島の桜を追いかけた日々。富士桜がとてもとても好き。
                                 (おわり)

 
 

 


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