ことのはスケッチ(432) 2014年(平成26年)12月
『バルセロナ』
「もう飛行機に乗れないかもしれない…」何となく自身がなく…そんな時「バルセロナに“テンポラリーの家”を借りたから、絶対に来なくてはだめ!」玉由と由野に励まされ、「行ってみようか」という気持ちになった。
三河アララギへの原稿が集ってくる。添削みたいなこともあり、割り付けをし、原稿用紙での原稿をパソコンに打ち込みしていただく手配。表紙絵を描く。校正。発送。一ヶ月間に渡す一つ一つの日付けの、どの一つも欠かせない日常を遣り繰りし。枯れてしまった「幸福の木」の一枝だけ蘇った植木鉢の水やりのこと、すぐ満ちてしまう郵便受けのチェックを頼まなければいけないこと!
心臓が重くなって、甲状腺の先生から“お守り”としていただいている「心臓の負担を和らげる薬」を飲んだりして…旅の人となる。「飛行機に乗れない」と思い込んだ年月に、目新しいことが増えていること、世の移ろいにびっくりしつつ、十三時間の飛行中、薬も飲まず、干からびることもなく、ロンドンに着いた。
アムステルダムで仕事をしていた玉由と、ロンドン空港の人混みで会い、ニューヨークから来た由野が待っていてくれるバルセロナに向けた乗り継ぎ便に乗った。夜中ほどにバルセロナの「2LDK」基本的必需品の整っている「家」に着き、ひとりづつの部屋を確保し、バルセロナの休日の始まり。次の朝、目覚めると、すぐ近くの「市場」へ。朝食にゆく。
肉類、ハム類、玉子類、魚介類、野菜類、果物類、花々類…すべての品々の濃い色。光り輝き、全部買ってしまいたい衝動にかられる。なんにも要らなかった心の、この変りよう。市場の中のあちこちにカウター席の店があり、出来上った料理が並んでいる。毎朝ここに来ているような地元の人の隣りに座り、コーヒーと茸のオムレツを頼んだ。季節の香り“おいしい” 朝だというのに鰯の唐揚げも…料理も、隣の人も、言葉もアルゼンチンと同じ。リラックス。
どの道にも広い自転車専用道路が付いている並木道を歩いて、サグラダ・ファミリアへ。一八五二年生まれのガウディが造りはじめ、神とバルセロナの人々の意志により今も造り続けられている空に突き刺す“カトリック教会”。
数学ではなく綱状の糸に重しを付け、自然の力で最も安定する模型を作成して造りあげたのだと。ものすごいことになっている。
カサ・パトリョなど、人々が住むために造られた。ガウディの曲線の建物がいくつも見られる町並。ここに住んでみたい!との希望も生まれた。
カタルーニャ音楽堂。本当とは思われない、夢の中に居るのだろう。今も演奏会が開かれる。食事タイムも、しっかりしっかり味わって。小さなムール貝。平たい殻にしっかり付いてかるカキ。茸。鮟鱇。イカ墨。生ハム。毎日こんなの食べていたい。
夜は、大きなサッカー場、カンプ・ノウ。それはそれは大きい。そこをメッシが走る。ゴールする。ネイマールの敏速、ゴールする。全エネルギーでウェーブに加わる。叫ぶ。
「死んでしまうのかな!」だったこんな気持ふっとんだ。もっともっと沢山の時を、子供達と一緒に過さないと勿体ない。
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