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ことのはスケッチ (349)
『 地 下 』
月周回衛星「かぐや(SELENE)」が種子島から打ち上げられる様子は、オフィスのパソコン動画像で見ていた。
衛星は、月を巡り、驚きの映像がおくられてくる。月の周りを回っているだけで、月全域の元素、鉱物の分布、地形、表層、構造・・・なんでもわかってしまうのだそうだ。
何も知らないで、空想にふけっている訳にはゆかなくなってしまった。
自分の目で、自分の心で感じるのが良いのに、大変な世の中になってしまった。
私の月も、息もできない、水もない、これ以上の寂しさはないと思われる映像、
困ることばかりみたい。知れば知るほど心細い。
「知らぬが仏」が懐かしい。
このことは別にして「かぐや」は、月の内部二十キロまで、どういう構造になっているのか解るのだという。
まず「地球の内部」を知らなければいけないのではないか。
つい先日まで、夜中に家に帰り着くと、大きなヤマモモの木が一本だけ生えている庭のどこからか大きな蛙が出てきていて、ぶつかってしまったり、グ二ャーと踏みそうになったりしたものだったけれど、このところ居ない。冬眠してしまったのだろう。
私の思考の地球内部とは、まず蛙が眠っているだろうこと、蛇や虫達や蟻の巣や・・・木の根っこもかなり深くまであるだろう。ライフラインも沢山埋まっているだろう。
地下鉄に乗るのにとても沢山エスカレーターを乗り換えたりして、地中深く降りてゆくから・・・この恐怖感は、馴れと、諦めとに委ねるしかない。
どんどん地下鉄線の新しいのができ、どんどん地下深く降りてゆかなければならなくなり、人間度を麻痺させてゆく。
地下を思い始めたから目についた。
東京湾の埋立地、青海の日本科学未来館で「地下展」が開催されている。空想ではない、本当の「地下」に分け入る。
足元より100メートル下がると、圧力も温度も高くなるそうだ。
3200メートル下がり、今のところ最も深い所から見つかった「アルカリフィルス・トランバーレンシス」という命。
生命という存在が地球を造りあげてきたのだという。
地球ができるころのこと、光合成をおこなう“植物プランクトン”のような生き物が海中に誕生し、太陽エネルギーを利用して二酸化炭素を吸収、分解、酸素を排出した。
そこへ“植物プランクトン”を捕食する“動物プランクトン”のような生物が誕生した。
原始生物達による生命活動の積み重ねで、現代の酸素濃度になり、プランクトンは命を終えると、海中深く沈み、堆積し、加圧され、地層を形成し・・・石油となった。
地上に進出した樹木などは、やはり堆積、加圧され・・・石炭になった。
地球のはじまりは、大量の隕石の隕石衝突エネルギーで、地表が高温になり、岩石が溶け、マグマの海の鉄や硫化鉄が岩石と分離し、重い鉄や、硫化鉄が沈んで地球の中心の核(固体鉄)が形成された。
とうとう、地球の芯までゆき着いた。地球の上を一歩一歩歩くにつけ、新しい思いが“ずしり”と加わった。
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