ことのはスケッチ (356)
『スーパー・コンピューター』

朝、オフィスに着く。まずパソコンを立ち上げる。
「東京工業大学百年記念館・サイエンス・カフェ」より、「計算で何ができるか?日本最速のコンピューター・TSUBAMEを体感してみょう」との案内メールがきていた。
「是非体感してみよう」もちろん申し込みをした。
夕方、仕事が終ってからの18時〜20時の時間帯がありがたい。

生まれつき身に備わっていること意外はすべて不得意、という私の最も不得手なことは、いわゆる算数とかいうこと。
まがりなりにも店らしいことをしていて、いざ会計、計算となると、お客さんが見かねて手伝ってくれる。だから困らない。
でも、最近「インド式計算」の本を一冊じっくり読んだから、たまには要領の良い計算が出来ることもある。
それに“勘”というのが得意で、だいたいのことはこの辺りで済ませてきた。

当日どなたでも受講できます、ということだったけれど、やはり学生が多い。私みたいな人も少しはいたことはいた。
受付を済ませ、会場となる会議室は、ゆったり大きなスペース。六〜七人用のテーブルが十卓ほど、テーブルには、それぞれサンドイッチやスナック類がどっさり、山盛り。お茶、コーヒーなど飲み物も用意されていた。
一日の仕事を終え、カラカラになった身には、ホッとする。

はじめの授業。
コンピューターがいかに「偉い」か・・・を知らしめるために、人間に幾つかの応用問題がだされた。
私は、ここに及んでも地道には計算はせず、“勘”ですませた。
二問は正解し、一問は間違った。
そして、いよいよ人間がしたことを、人間では出来ないことをコンピューターがすると、どれだけ速く、どれだけ正確に、どれだけ可能性があるか、・・・知ることになる。

コンピューターが速く、大量に、起こりうる状況を加味、把握し、正しく問題を解くための効率的手段「計算をする方法」を、九世紀のイラクの数学者の名前から、「アルゴリズム」というのだそうだ。そんなに昔からの方法が、今をときめく最先端のコンピューターを操作する基礎になっている、という先達の先賢も知る。
どんどん広範囲に、知らないことが一つもないように計算され続け、もっともっとコンピューターの容量を増やし、巨大化し、スーパー・コンピューターは、大きな建物を占める。
宇宙のはじまり、地球のはじまり、空想したり、わからなくて苦悩していたり、・・・考えることをあきらめる以外なかったことが、スーパー・コンピューターの計算によるシミュレーションで目に見えるものになった。

それ以来、東工大の構内にあるスーパー・コンピューターの建物まで、よく散歩にゆく。
同じ構内にある「地球資料館」は、いつも誰もいないような所だけれど、地球で一番古い四十億年前の石。地球で一番古い大樹の化石、などなど目が白黒してしまうものがゴロゴロしている。
太古の過去も、超未来も、私の手の届く範囲にあるという毎日。

 
 

 


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