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ことのはスケッチ (359)
『星はすばる』
いつの頃からか、山ほど積み重なってしまっている私のCDコーナー。このなかから「昴―すばるー」という曲を探しだした。
この歌詞は本物の「星のすばる」をうたった歌と知る。こんなにも悠久、雄大な歌に出会った。
「すばる、プレアデス星団」とは、おうし座にあり「統ばる」「まとまる」意味で、数百個の星が集まった散開星団。この星団は、五千万年前に生まれた、まだ若いといわれる星々、太陽の千倍も明るく光輝いているという。
星の世界では、この星団は短命とのこと、あと、五千万年ほどで砕け散って、光をなくし、死んでしまう。
今から五千万年も先に死んでゆく星に「さらば」と歌う歌詞に驚いてしまった。
丁度千年の昔、一條天皇の御代、後宮を中心に、紫式部、清少納言、泉式部・・・
女流文人、歌人が活躍をした。
清少納言の「枕草子」に『星はすばる。ひこぼし(わし座のアルタイ)。ゆふづつ(金星・明星)、すこしをかし。・・・』とある。
天文学的時空のなかで、点にもあたらないだろう人間の存在の、清少納言が見る「すばる」、私が見る「すばる」。
清少納言が心に留めた星を、私ももてる限りの感覚で感じてみたい。
そんな折、自然科学研究機構より「宇宙究極の謎―、暗黒物質、暗黒エネルギー、暗黒時代」とのシンポジュームがある旨メールが届いた。
たちまち会社は休みにし、朝から学究の人となる。
ハワイにある、日本の「すばる望遠鏡」、そのきわだった性能により、どんどん遠くのものが見えてくる、コンピューターもどんどんスーパー化して、距離でも物でも、どんどん計算をして、この天文学的数字に至っては、人間の感覚で把握することなど、とても無理、神様にまかせるよりほかどうしようもない、と思えることも、あきらめないで考え続け、方法を模索し続けた物理学者、数学者、天文学者が、気負わずに、ここまで分かるようになった次第を話してくださる。
もっともっと望遠鏡の性能をあげれば、もっともっと見える範囲が拡がること、コンピューターをもっとスーパー化することで、もっともっと計算できること・・・。
新しい物理学が生まれるだろう興奮を講演する。
コンピューターが計算して作りあげたシミュレーションで宇宙を見せてくれる。
ただ暗黒だった長い億年を揺るがして、一番はじめの星がうまれる。
一番星が光を放ち、目に見える宇宙ができてきた過程。
本当かなあ・・・。本当のはず・・・。
「すばる」が五千万年前に生まれたであろう様子を、宇宙に一番はじめに生まれた星のコンピューターシミュレーションと重ね合わせた。
理解の程は危ういけれど、私の知り得た最前線の宇宙を心に、『昴―すばるー』を歌ってみようと思う遊び。
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