ことのはスケッチ(368) 2009年(平成21年)10月

『極楽浄土』

 父が居る。母が居る。大須賀先生がゆかれた。
 極楽浄土という仏土は、広々としていて、一切の苦はなく、楽のみがあるところだという。
 地球にあった命が終る。極楽に場所を移したということは安心していられるけれど、極楽浄土にゆくのには、10の19乗光年もの距離をゆかなければならないという。
 『心』にならなければ、とてもそんな距離を移動出来るとも思えない。『心』の内に仕舞っておくべきことだとは思うけれど、やがて、かならず自身がゆく、その距離を道すじを把握していたい。
 方向は宇宙。宇宙というを知りたい。
 昔は、目で見る。頭で考えをめぐらす。神様の御心である宗教。呪術。魔法。…宇宙と付き合った。
 十六世紀頃、ヨーロッパの諸侯は、占星術師を抱え、星占いで政策を行い、錬金術師により金を造ろうとしたり、財政をまかなっていた。
 そんな時代、『ヨハネス・ケプラー』が観察事実に基づき、数学的推論で宇宙を見た。
 ケプラーと相まり、『ガリレオ・ガリレイ』が、観察、実験により、宇宙を、物事を、確認していった。
 オランダのメガネ製作者により考案されたものを、ガリレオが自作し、一六一○年一月七日、宇宙に向け覗いたのが望遠鏡のはじまり。
 上野の「国立科学博物館」で「宇宙の謎を解き明かす』展が催されている。
 レプリカだけれど、ガリレオが作り、宇宙を拡大して覗た望遠鏡が展示されていて、そのわずかな倍率を覗かせてくれる。
 ガリレオは、一目で全面が見られない月面を、望遠鏡をずらし凸凹を克明にスケッチした。
 何十枚にも及ぶ太陽の黒点の観察、黒点の変化により、太陽の自転が結論されたこと。
 金星の満ち欠け。土星の環の発見。木星に合わせた焦点は、木星近くの四つの星を見付け、四つの星の位置が変化することを観測した。
 地球が宇宙の中心であるとしていた当時、地球以外の惑星の周囲を回る星の存在に、地球が宇宙の中心ではなかったという、現代科学の始まりが導かれた。
 ガリレオが世を去った一六四二年に『ニュートン』が誕生し、古い形の神秘や呪術、宗教による迫害を脱して、精密な観察と実験と数学的論証を基礎とした体系になったという、宇宙を見る方法を、昔から今へと順序良く教えてくれる企画をたどる。
 ハッブル宇宙望遠鏡のレンズを通した宇宙を、コンピュータがとらえ、それをシュミレーション化した画像で、百億年の時空が見られる現代。
 地球に届くのに、百十億年かかる超新星の爆発現象も見えた。
 「宇宙探査ロボット・ガリレオ」より、木星の衛星イオで、硫黄の噴出している火山を見る。
 百三十億年前に出来たという宇宙、そこまでをたどって見るのには、もう少し性能の良い望遠鏡を造ればよいということ、コンピュータの性能を増せばよいだけのこと、なのだとか。
 極楽浄土はどの辺だったのだろうか。十の十九乗光年の計算をして、そこを覗けば特定出来るのだろうか。

 
 

 


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