ことのはスケッチ(377)  2010年(平成22年)5月

『4次元』

今の標準宇宙論、137億年に及ぶ宇宙の姿を可視化するという。
 空間の3次元と、動き(時間)の1次元を加えた4次元のもとで、“宇宙の果て”までを見るというプロジェクトの席に紛れ込んだ。実際に観測された宇宙と、コンピュータで計算されシミュレーション化されたものと。
ハワイ島のマウナケア山にある「すばる望遠鏡」による可視光(恒星や銀河)、赤外線(可視光では見えにくい天体)による観測。
南米チリのアタカマ砂漠の「ミリ波サブミリ波干渉計アルマ電波望遠鏡」で宇宙ができて間もないころまでがとらえられている。
私の経験、アルゼンチン側アンデス山脈にいてチリアタカマ砂漠からあまり遠くない位置で、空にすきまがない程の星々の輝きにうろたえたことがある。人間の目で見る範囲ですらこんなに沢山の星があった。
宇宙へとびだしてゆくにあたり、極楽浄土が10の19乗の所にあるという。どのあたりになるのだろうかとの発想はつづいていた。
計算をしてみた。10の8乗が1億。10の10乗が100億。10の11乗で、今の137億光年という数字は通り過ぎてしまう。極楽浄土は宇宙の内にあるというのに。
10の19乗には単位が定まっていなかったことをふまえ、光年の単位をやめ、センチ、ミリ、時、分の単位にしてみると、充分宇宙に収まった。
数字で計らなくても、特定出来ない場所、どこにでも極楽浄土は設定出来る、地球に生まれた人間の心にあると悟るのだった。

星が生まれ、星が爆発し、星が死んでゆく。星の爆発で作られた元素は宇宙に散り、次の世代の星の材料になる。輪廻転生を思わせる。
宇宙も、私達の身体も同じ元素で出来ているという。
星々と同化する身体を宇宙遊泳させ、宇宙の果てまでを見る。
太陽から六番目の土星に近付く。数センチから数メートルほどの氷の塊が沢山、土星を周回して輪を形作る
太陽系を離れると、知るは少し、知らない星々の間をゆき、天の川とは、あまりにも沢山の星の集まりであること、その沢山ですら今では数えてしまうのだそうだ。
宇宙物質のゆらぎは重力により成長し、密度が大きくなったところはダークマターを集め、網目状の構造が作られ、網目構造の節々に銀河が生れ、重力が増し、銀河団が形成され…。

沢山の銀河が密集している大規模構造の宇宙。
大きな空間として見える部分の宇宙。
そして彼方に、地球から137億光年というあたりが見えてしまうのだった。
地球から、宇宙の果てまで来てしまったとまどいと、幼い日の空想と、そんなに違わなかったような、シミュレーションではない、本当の本当がわかってしまう日がくるだろうこと、宇宙をここまで見てしまったつもりも、まだ宇宙の4%ほどを見たにすぎないということだった。
未知があることはうれしい。生きている励みになる。

 
 

 


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