ことのはスケッチ(388) 2011年(平成23年)4月
『きぼう』
高度三百五十キロメートル、大気がほとんど無いところ、一周約九十分で地球を周回しながら地球や宇宙の観測をおこなう有人施設「国際宇宙ステーション」。
アメリカ合衆国、ロシア、日本、カナダ、欧州宇宙機関加盟国十一ヶ国が協力建設中のその日本実験棟の「きぼう」利用成果ミニシンポジウムに参加した。
年度末の故か、研究報告の講演が多く、せっせと参加して学生に戻ってしまったような日々。
今回は、東京国際フォーラム、ガラス棟の中にある会議室で開かれた。
ガラス棟に踏み入って、「ここに来たことがある」。
アルゼンチンのセリーナさんが、アルゼンチン生れの玉由と由野の日本留学中の様子を見に、日本まで来て下さった時。
セリーナさんの、ウルグアイ生れアルゼンチン育ちの知人ラファエル・ヴィニオリ氏の設計、東京国際フォーラムを見に来たのだった。世界各地に彼の建造物は聳えていて,セリーナさんと見上げたことを思い出す。
地下三階、地上七階、巨大吹き抜け、総ガラスを白い鉄骨を支える。透き徹った「ノアの方舟」のような…さすが異国の人の設計、すごい。
大きな外力に抵抗できる耐震は充分に備わっているに決っている。(今度の地震後、すぐ見に行った。何事もなくクールに建っていた)
「きぼう」利用の宇宙実験は、細胞培養装置を用いて、宇宙の微小0・111重力、1G重力、100G重力の三種の重力のもと、ペンペン草の種に水を加え、発芽から種をつけるまでの四十日間の記録。
宇宙重力では、葉は少なく、ひよろひよろしていたけれど実を結んだ。その種がどうなるか…と実験は続く。
ペンペン草は大好きな草だから、とてもうれしく参加していた。
将来の宇宙環境や水分の少ない環境において、効率的な植物生産を可能にするという実験だった。
線虫の遺伝子の操作をして遺伝子治療への応用という研究。
カエルの細胞の無重力でわかる遺伝子の仕組みなど、再生医療への応用が期待される実験。人類を宇宙に順応し安く改造する?のだと理解した。
自分に直接関係ないだろうと思ってしまうことが実験されていて、いつの間にか自分に関係してきてしまっていたり…。
地球の上ではないこと…地球の上のこと…まったく自分に関係のない天文学的単位の中にわり込もうともする実験…なんでもかんでも見とどけよう…。
私の毎日通る所に東京国際フォーラムがあり、ただ見て通り過ぎた日は終り、「きぼう」の実験のこと…セリーナさんのこと…大きくふくらんで身近になって…一人勝手にうれしくて仕方がない。
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