ことのはスケッチ(394) 2011年(平成23年)10月

『ニューヨーク』

 二階建の、太陽にもろにさらされる私の書斎、とてもとても暑い。
 一日中留守にする生活だったから過せたけれど、基本的に家に居る生活になったこのごろ、この暑さには“ぐったり”しているばかり。
 一つ二つのエアコンをつけても何事もない、家中のを全部つけて一人で居るということは、節電の心に反する。
 “そうだ、口減らしにニューヨークへ居候しにゆこう”日本国には、極限のゼロ近い節電、節水が出来るわけだから、やっと役にたてることになる。
 心軽くニューヨークに着いた。子供達はそれぞれ仕事に出掛けており、一人家にいて“さて、何をしようかな”と思う時、電気スタンドがユラユラした。“たいしたことない”“あ、大変、ニューヨークには地震は起きないはず”“耐震建築はなされていないはず”“摩天楼のど真中にいるのだ”
 テレビをつけると、どの局も、地震騒動をしている。人々は、マーケットに走り、水だ!食料品だ!立ち話しだ!
 ニューヨーク地域で、M5以上の地震は、一八八四年以来発生していないとう。
 一万七千年前、氷河が溶けはじめ、ハドソン川を滑り落ち、マンハッタンも氷に洗われ陸が姿を現した。今ではセントラルパークで、氷河にけずられた岩盤が沢山露出してみられる。
 マンハッタン島は、二つの片岩が一つになった一枚岩の島。地震は起らない、ということになっている。
 各家庭に、水と食料品が増え、大興奮は治まった。
 そして今度は、過去五十年で一番大きいハリケーンがやってくるという。
 ニューヨーク歴史上初の避難勧告及び地下鉄、バスをはじめとする公共交通機関のストップ。NYの地下鉄は、ほぼ二日間運行休止された。空港も閉鎖されてしまった。
 ニューヨークのど真中、総ガラス張りの家の中から、“ガラスが割れたらどうしよう”と、外の様子を見張っていたのだけれど、雨の時に少し降り、街路樹は“そよ”ともそよがない。
 “閉じ込め”を避けるため、とてつもなく高いビルのエレベーターも止まってしまっていた。自動車も通らない。
 みんなストップしてしまった、静かな静かな不思議なニューヨーク。
 どこの家庭にも、懐中電気やローソク、もっと水、もっと食料が増え、“アイリーン”は去っていったのでした。
 子供達と、国を隔てて遠く住み…そういえば、災害にあっている子供達を安じ、狂っていたことが何度もある。今回は、一緒に居られたから本当によかった。アルゼンチンで生れた私の赤ちゃんを“守ってあげなくては、守ってあげなくては”と抱き締めた日を思い出す。

 
 

 


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