アルゼンチンつれづれ(116) 1988年07月号

カリフォルニアの生活

 「あ!山が燃えてる」ほとんど大きな植物の様子がないような山でも、結構炎が上る。ヘリコプターが何やら撒布しているらしく幾台も、トンボが群れているみたい。
 初めて、すぐ近くの山が燃えたのを見た時は、“どうして皆騒がないんだろう”“学校へ行っている子供達を連れに行かないといけないかしら”とビクビクしたものだったけれど、これはカリフォルニア名物?といわれるくらい頻繁に起るサンタアナ熱風による自然発火現象であると知る。住み始めて程ないのに、もう何度も山火事を目近にした。
 何しろ乾いています。肌がカサカサして、ミイラになってゆくような、自分の身体が乾いてくる感じというのを経験しています。絶えず手や足、出ている所にボディクリームを塗ってなおかつ、シミ、ソバカスとか、そんなの増えそうな予感非常にありです。汗っぽさ、湿っぽさに無縁で、さわやかではありますが。
 ほとんど木も草も生えていないような所に水を撒き、線を引っぱり、パームツリーなどの木々を、どこからなのでしょうか運んで来て、並木とし、町を作ってしまう。カリフォルニア特有と思っているパームツリーも自然に生えていたのではないみたい。適当に胡桃の木なども配置されているから、町中に人間と平行してリスも沢山住んでいる。個人の庭も、公共の場も、自動噴水給水装置がついていて、絶えず水を振り撒いています。この水は、シエラネバダの雪解け水なのだそうですが、今年は水不足が言われています。
 水を撤いて、線を引っぱる前からずっと同じなのでしょうが、カリフォルニアの太陽のまったく雄々しいこと。このごろは、朝5時には、恐しい程のエネルギーでベッドルームに押しかけてきます。大体の家の造りが、窓ではなく、全部透明ガラスのガラス戸だから、部屋中朝日で埋まってしまう。カーテンなんて何のその。眩しくてまぶしくてとても寝ていられる状態じゃありゃしない。なんとか朝日を遮る努力はせずに、折角だものと起きてしまい、コリコリ豆を挽く、家中にコーヒーの香を満たし、歯ごたえのあるべーグルにクリームチーズを山盛り乗っけて朝日の中で。これはとってもカリフォルニア。
 我家は、ロスアンゼルスというと必ず出てくるハリウッド文字の山のその文字の丁度反対側に当り、このハリウッド山を含めたまわりの山々に、野生のスカンク、リス、鹿、うさぎ、コヨーテ、洗い熊……等住んでいて、時々出逢ってしまえる位置での共存。
 リスの交通事故は、本当によく見かけ、痛みます。私自身も、何度急ブレーキを踏んだことか。リス達も早く進化して、信号を見て道を渡らないことには。それから妙に感じてしまうのは鳥達の事故、鱈腹食べたのでしょう、コロンコロンの鳥達が鈍いんでしょうね、車にひかれる。“そこ退け、そこ退け”なんて言っている暇もないんだから。
 それにつけても、カリフォルニアの人達の大した肥満ぶり。年中同じような気候で、ダラダラけじめがなく、服装もだらしない程好い加減。食べるにしろ、飲むにしろ、一人前という単位が非常に大きく、私は「こんな大味のものを、こんなに沢山の量食べるのは絶対にいやだ」と思う場面ばかり。食物を「残してはいけない」と叱ったことを話題にしつつ子供達にも「そんなに食べちゃだめ、残しなさい」って、普通の人間の姿を保つべくの日々。カリフオルニアって、身も心もだらしなくなり安い所。

 
 

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