アルゼンチンつれづれ(119) 1988年10月号

ディズニーワールド・マイアミ

 四季に移ろう日々も、単調なカリフォルニアで過すことも、いずれにしろ月日のたつのは早いもので…。
 こんなにも飛行機に乗る生活を続けていながら一家四人で旅をしたというのは、ずっと昔?のことになってしまった。“夏休み”この際、気分転換に皆で一緒に出かけてしまおう。
 北半球とシーズンが逆になる南半球アルゼンチンのアンデス山脈の中のスキー場ラス・レーニャスで、“スキー三昧”を主張するのは地球上のどこででも常にスキー行を狙っている子供達の父親。
 「マイアミのディズニーワールドに行きたい」の子供達。
 私は、やっぱりアルゼンチンでの友人達と過したい。
 皆の希望が上手に織り込まれた三週間のスケジュールが出来、あまり沢山飛行機に乗るので、航空会社からファーストクラスの招待となり、一家四人、スーツケース一人一つづつで旅の始まり。子供達にも一度はファーストクラスの旅を教えたい。いつか自分で自分の生活を作る時の参考に。
 四人ずっと一緒に居て、同じ物を食べ、同じ物を見、一つの会話の中に四人がいて…。 勢の良い父親には、離れた生活で、膨み考えていた程子供達にバイタリティがないのに失望し、こんなものだろうとあきらめ、健康なことが最上、とハッピーな方向に気持を持ち込む大変な努力が読みとれはしましたが…。
 アンデスの尖った山々が写るスキーの写真が沢山撮れ、「どちら向いてもめずらしい景色だった」「またスキーに行こうね!」と天真爛漫なのは子供達。
 思い出、未来、ブエノスアイレスの二十年来の友人達との時は甘く、「またすぐ来るから」と涙を振り切ってマイアミヘ。
 マイアミの父親の事務所、友人達。何しろ時々、ひょっこりやって来て、家に滞在する間中寝ているのが父親と見ている子供達が、「お父さんは、会社のソファで昼寝ばかりしているんじゃないんだね」とアルゼンチン、ブラジル、マイアミでの二十二年間の実績に感心する。良かった。子供達に誉められる父親で。
 そしていよいよディズニーワールド。このディズニーさんのワールド施設を訪れるだけの為に飛行機に乗って集まってくる世界中の人々。
 まだオープン間もない、誰もが嬉しくなれる建物が見え、近付いただけで天国、浮き浮きとチェックインするホテル。“わあ!”あれも!これも!これも!”次々と歓声をあげてしまう心配り。こんなきれいな夢の中に自分達が入り込め、木目細かな、笑顔の接客。「アメリカの人だって出来るじゃないの!」 ギャング、変態、倦怠、麻薬、ホームレスが色濃いアメリカに住んでみて、子供達だけで「ワーイ」と飛び出して行ってしまい、夜中になっても「楽しんでいるかな」なんてところがアメリカにもあった。
 「自分達も楽しんだけれど、本当はお父さんとお母さんが一番嬉しかったんじゃないの」「またこんな旅しようね、せっかく一家だもの」なんて子供達に言われつつ思った、少しずつディズニーランドを大きくしていって、アメリカ中をディズニーランドにしてしまえばいい。明るさ、楽しさ、清潔さ……これはアメリカの大変な特技。世界中にこんなお零れ振り撒いて欲しい。ディズニーさんの偉大さ、アメリカにディズニーさんが居て本当によかった。

 
 

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