2026年 短歌

1月  儚む

カタカゴ・ヤマスゲ・ワスレグサ・ヒメユリ…ユリ科私の一世をここにつなぐ

人工の明りなくしてただに闇氷河の軋む音聞こえくる

まん円の月の明りの届きゐる一万メートル上空飛行機の窓

ゆらゆらとゆらぎをり太陽光太陽の出来し次第をしのぶ

方角は確かではないまた会はむことのはかなさ残りをりつつ

遠く遠く丸き地球を行き来せりセリーナ・アラウス・ペラルタラモス・デ・ピロバーノ

バルセロナより来たりし人とスペイン語ありたちまち親し

スペイン語ポルトガル語に紛るるを異にせざりし長き年月

極端に嘆き哀しむタンゴのなかにしばらく入りぬ

朝の陽に勝鬨橋を午後の陽は佃大橋を描き居たりひとつ日

ゆらゆらと墨田川の川面にて太陽沈みゆきゆく次第

三河湾の磯砂辺りに育ちにき地球半周の先ブェノスアイレス親し

良き日々ありきセリーナさんとモレノ氷河の終着地点

父上を母上をまた忍びをりはやゆかむとする秋の一つ日

彫りあげし雲中菩薩に千年の木目浮き見ゆるこの朝


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