1月 儚む
カタカゴ・ヤマスゲ・ワスレグサ・ヒメユリ…ユリ科私の一世をここにつなぐ
人工の明りなくしてただに闇氷河の軋む音聞こえくる
まん円の月の明りの届きゐる一万メートル上空飛行機の窓
ゆらゆらとゆらぎをり太陽光太陽の出来し次第をしのぶ
方角は確かではないまた会はむことのはかなさ残りをりつつ
遠く遠く丸き地球を行き来せりセリーナ・アラウス・ペラルタラモス・デ・ピロバーノ
バルセロナより来たりし人とスペイン語ありたちまち親し
スペイン語ポルトガル語に紛るるを異にせざりし長き年月
極端に嘆き哀しむタンゴのなかにしばらく入りぬ
朝の陽に勝鬨橋を午後の陽は佃大橋を描き居たりひとつ日
ゆらゆらと墨田川の川面にて太陽沈みゆきゆく次第
三河湾の磯砂辺りに育ちにき地球半周の先ブェノスアイレス親し
良き日々ありきセリーナさんとモレノ氷河の終着地点
父上を母上をまた忍びをりはやゆかむとする秋の一つ日
彫りあげし雲中菩薩に千年の木目浮き見ゆるこの朝
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