2月 水平線
飛行機の小さき窓に五つ六つ雨粒宿し飛び発たむとす
マイマミへ行かむ飛行機の座席中あのことこのこと甦りくる
まつ暗になりたる日本の景色の中を飛びい出しますマイアミ向けて
マイアミの大き星空見あげつつ宇宙のほんのいち少部分
より速くより遠くへと真地球を見下ろしてゆく目的地
朝まだきブルトーザーの砂浜掃除素足を守る守られゐたり
見ゆるもの一番奥の地球のまるみたずさえた水平線を私の窓
どの方に日本国はあるかしらさらさらさらさら磯砂をゆく
さらさらと素足にやさしかった砂決を思い出している真暗闇
明日もまた朝日と共に輝けるそのぬくもりとその輝やきと
迷子になったらもう帰れないアマゾンジャングルうろうろしたりき
目に見えぬ物質の存在よダークマターにうずもれゐると
ただ単に地球に生きてゐることにあのことこのこと加はりきたり
朝の陽は水平線よりのぼり来しそして私のべツドに到る
地球なるまろみもちをり水平線地球に生きていることよ
1月 おとなしく
スペインのサグラダファミリアの栞して守るページあり
神様のおられ月のあることをいかに守らむこの月の月
はてしなく大きいという銀河系を地球に乗りて太陽まわる
地球にて世界八十億人口のその一人ひとりのままにひとり
東京の恵比寿に住む昔日のまよい道のただ中を迷子になりつつ
音なしく匂いも色も無となしてそれでも私はしっかり居ます
松の木の冬日の寒さ凌ぐため「こも巻き」をする兼六園
秋の日の大き青空飛行中四十六億年前に生まれし太陽
海王星まで行かなくてよしマイアミまで辿り着けば良い
果てしなく大きいという宇宙につづく方落付き見詰む
地球なる引力身体に感じつつ飛んで飛んでフロリダマイアミ
落ち葉してヤマアララギは辛夷の木三丁目の交差点わき直と立つ
玄関前四階のテラスに届くマグノリア・コブス・辛夷と共生
辛夷咲き苗代を作りはじめよと大豆、ジャガイモ播き時期告ぐる
太陽系の果てより飛び来こしといふ「アトラス彗星」ようこそ私に
|