2025年 短歌

2月  水平線

飛行機の小さき窓に五つ六つ雨粒宿し飛び発たむとす

マイマミへ行かむ飛行機の座席中あのことこのこと甦りくる

まつ暗になりたる日本の景色の中を飛びいしますマイアミ向けて

マイアミの大き星空見あげつつ宇宙のほんのいち少部分

より速くより遠くへと真地球を見下ろしてゆく目的地

朝まだきブルトーザーの砂浜掃除素足を守る守られゐたり

見ゆるもの一番奥の地球のまるみたずさえた水平線を私の窓

どの方に日本国はあるかしらさらさらさらさら磯砂をゆく

さらさらと素足にやさしかった砂決を思い出している真暗闇

明日もまた朝日と共に輝けるそのぬくもりとその輝やきと

迷子になったらもう帰れないアマゾンジャングルうろうろしたりき

目に見えぬ物質の存在よダークマターにうずもれゐると

ただ単に地球に生きてゐることにあのことこのこと加はりきたり

朝の陽は水平線よりのぼり来しそして私のべツドに到る

地球なるまろみもちをり水平線地球に生きていることよ

1月  おとなしく

スペインのサグラダファミリアの栞して守るページあり

神様のおられ月のあることをいかに守らむこの月の月

はてしなく大きいという銀河系を地球に乗りて太陽まわる

地球にて世界八十億人口のその一人ひとりのままにひとり

東京の恵比寿に住む昔日のまよい道のただ中を迷子になりつつ

音なしく匂いも色も無となしてそれでも私はしっかり居ます

松の木の冬日の寒さ凌ぐため「こも巻き」をする兼六園

秋の日の大き青空飛行中四十六億年前に生まれし太陽

海王星まで行かなくてよしマイアミまで辿り着けば良い

果てしなく大きいという宇宙につづく方落付き見詰む

地球なる引力身体に感じつつ飛んで飛んでフロリダマイアミ

落ち葉してヤマアララギは辛夷こぶしの木三丁目の交差点わき直と立つ

玄関前四階のテラスに届くマグノリア・コブス・辛夷コブシと共生

辛夷咲き苗代を作りはじめよと大豆、ジャガイモ播き時期告ぐる

太陽系の果てより飛び来こしといふ「アトラス彗星すいせい」ようこそ私に


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